シャワーユニット
2025/11/30
賃貸マンションやアパートでの暮らしで、「バスルームがもう少し快適だったら…」と感じたことはありませんか。特にシャワー環境に不満があり、「おしゃれなシャワーユニットを後付けできたら最高なのに」と考える方も少なくないでしょう。しかし、賃貸物件ならではの「原状回復」という言葉が頭をよぎり、なかなか行動に移せないのが現実です。
この記事では、賃貸物件でのシャワーユニット設置の可否、原状回復に関する正しい知識、費用相場、大家さんとのトラブル回避策などをご紹介。あなたのバスタイムを豊かにするための、確かな知識を手に入れましょう。

まず結論からお伝えします。賃貸物件へのシャワーユニットの後付けは、「大家さん(または管理会社)の書面による許可があれば可能」です。ただし、シャワーユニットの設置は給排水管の工事などを伴う大規模なリフォームとなるため、許可を得るハードルは非常に高いのが実情です。
もし幸運にも許可が得られた場合でも、退去時には「原状回復」の義務が発生するのが一般的です。これは、設置したシャワーユニットを撤去し、賃貸契約開始時の状態に戻すことを意味します。この「原状回復」を正しく理解することが、予期せぬ高額請求などのトラブルを避けるための第一歩となります。

「原状回復」と聞くと、「借りた時の状態に完璧に戻すこと」と誤解している方が非常に多いです。しかし、これは法的な解釈とは異なります。国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復の基本的な考え方が示されています。
このガイドラインを理解することで、退去時に何が誰の負担になるのかを冷静に判断できます。ここでは、貸主(大家さん)と借主(あなた)の責任範囲を具体的に見ていきましょう。
| 負担区分 | 具体的なケースと判断基準 |
|---|---|
| 貸主負担 (経年劣化・通常損耗) | 賃貸物件の通常の使用によって発生する自然な劣化や損耗、および設備の耐用年数経過による故障は、貸主が負担します。 これらは家賃に含まれるものと考えられているためです。 |
| 借主負担 (故意・過失・善管注意義務違反) | 借主の不注意や意図的な行為による損傷、または通常の清掃といった手入れを怠った結果として生じた損耗は、借主が費用を負担します。 これは、借主が善良な管理者としての注意を払う義務(善管注意義務)に違反したと見なされるためです。 |
経年劣化や通常損耗とは、あなたが普通に生活していて自然に発生する傷みや汚れのことです。これらは、あなたが費用を負担する必要はありません。
| 貸主負担となる具体例(シャワー関連) |
|---|
| – 設備の耐用年数を超えたことによる故障や劣化 |
| – シャワーヘッドのパッキンが自然に消耗して起きた水漏れ |
| – 通常の使用に伴う、シャワーホースの軽微な変色 |
| – 日当たりによる浴室ドアや壁の自然な色あせ |
| – 備え付け設備の製造上の欠陥による故障 |
一方で、あなたの不注意や通常行うべき管理を怠ったことで発生した損傷は、自己負担で修理する必要があります。
| 借主負担となる具体例(シャワー関連) |
|---|
| – シャワー中に物を落として、浴槽や床にひびを入れた、または割ってしまった |
| – 掃除を全くしなかったために、排水溝が詰まったり、通常清掃では落ちないカビが広範囲に発生したりした |
| – 結露を放置した結果、壁や床にシミや腐食が発生した |
| – 子どもがシャワーユニットのドアに落書きをし、消せなくなった |
| – 不適切な使い方をしてシャワーホースを破損させた |
賃貸契約書には、「特約」として通常損耗の修繕費用も借主負担とする旨が記載されている場合があります。しかし、どんな特約でも有効というわけではありません。消費者契約法に基づき、借主に一方的に不利な内容は無効と判断される可能性があります。
| 特約の有効性に関するチェックポイント |
|---|
| 1. 特約の必要性があり、暴利的でない客観的・合理的な理由が存在するか |
| 2. 借主が特約によって原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことを認識しているか |
| 3. 借主が特約による義務負担の意思表示をしているか |
例えば、「退去時のハウスクリーニング代として〇〇円を負担する」と具体的な金額が明記され、契約時に十分な説明を受けて合意していれば、その特約は有効となる可能性が高いです。契約書にサインする前に、特約の内容は隅々まで確認しましょう。

大家さんや管理会社が、なぜシャワーユニットの後付けに難色を示すのでしょうか。その背景には、建物の構造や管理上の明確な理由があります。大家さん側の事情を理解することで、交渉の糸口が見つかるかもしれません。
| ハードル | 内容 | 貸主(大家さん)の主な懸念点 |
|---|---|---|
| 1. 大規模な工事 | 給排水管の移設、壁や床の解体・再構築など、単なる設備交換以上の工事が必要になります。 | 建物の構造躯体に影響を与え、資産価値を損なうリスクがあります。 |
| 2. 漏水リスク | 防水工事が少しでも不十分だと、水漏れが発生し、階下の部屋に甚大な被害を及ぼす可能性があります。 | 他の入居者との深刻なトラブルや、高額な損害賠償問題に発展する恐れがあります。 |
| 3. 高額な原状回復費用 | 設置したユニットを撤去し、元の状態に戻す工事は、設置時と同等かそれ以上の費用がかかる場合があります。 | 借主が退去時にその費用を支払えない場合、貸主が負担せざるを得なくなるリスクがあります。 |
シャワーユニットの設置は、家電製品を設置するような簡単なものではありません。既存の給水管や排水管に接続する必要があり、多くの場合、床や壁を剥がして配管を延長・移設する工事が伴います。これは建物の構造に手を入れる行為であり、資産価値に直接影響するため、貸主は極めて慎重になります。
水回り工事で最も恐ろしいのが「漏水」です。万が一、工事の不備で水漏れが発生した場合、自分の部屋だけでなく階下の住人にも被害が及びます。そうなれば、家財の弁償など、高額な損害賠償責任を負うことになりかねません。このリスクを考えると、貸主が許可をためらうのは当然と言えるでしょう。
もし設置が許可されたとしても、退去時には原則として元の状態に戻さなければなりません。一度大掛かりな工事で設置したシャワーユニットを撤去し、壁や床を元通りにする作業は、決して簡単ではありません。この原状回復工事に数十万円単位の費用がかかる可能性があり、その負担を巡ってトラブルになるケースが後を絶ちません。

これらのハードルを理解した上で、それでもシャワーユニットの設置を希望する場合、どうすればよいでしょうか。成功の鍵は、丁寧な準備と誠実な交渉にあります。
【警告】無許可での設置は絶対にやめましょう
無断で工事を行った場合、契約違反として即時退去を求められる可能性があります。さらに、原状回復費用として高額な請求をされたり、万が一トラブルが発生した際には損害賠償を請求されたりするなど、計り知れないリスクを負うことになります。

仮に自己負担で設置・原状回復を行う場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。事前に相場を把握しておくことは、現実的な判断を下す上で非常に重要です。
| 工事内容 | 費用相場(目安) | 工事内容・備考 |
|---|---|---|
| シャワーユニット設置(ユニット工法) | 20万円 ~ 80万円 | 既存のスペースに組み立て式のユニットをはめ込む比較的簡単な工事。 |
| シャワーユニット設置(在来工法) | 40万円 ~ 250万円 | 床や壁を一から作るオーダーメイド工法。デザインの自由度が高い分、高額になり防水工事も必須。 [3] |
| ユニットバス全体の交換(マンション) | 60万円 ~ 150万円 | 既存のユニットバスをまるごと新しいものに入れ替える大規模なリフォーム。 |
| シャワーヘッド・水栓の交換 | 2万円 ~ 5万円 | 設備本体の価格と、専門業者による交換工賃の合計。 |
| 原状回復(ユニット撤去・内装復旧) | 15万円 ~ 50万円以上 | 設置したユニットの解体・撤去費用と、壁紙や床材などを元に戻すための内装工事費用。 |
※上記はあくまで目安です。実際の費用は物件の状況や選ぶ製品、依頼する業者によって大きく変動します。

シャワーユニットの設置が現実的でない場合でも、諦める必要はありません。賃貸のルール内で、バスタイムを格段に快適にする方法はたくさんあります。これらは原状回復が容易なため、気軽に試せるのが魅力です。
| アイデア | メリット | デメリット・注意点 | 費用目安 |
|---|---|---|---|
| 高機能シャワーヘッドに交換 | – 節水効果で水道代を節約 – 水圧アップで快適な浴び心地 – 塩素除去やマイクロバブル機能も | – 元々付いていたヘッドは退去時まで必ず保管する – ホースと一体型のタイプは交換できない場合がある | 3,000円 ~ 3万円 |
| 貼って剥がせる浴室用床シート | – 冬場の床のヒヤッと感を軽減 – 浴室の雰囲気を手軽に変えられる – 滑り止め効果がある製品も | – 粘着力が弱いと使用中に剥がれることがある – シートと床の間に水が入り、カビの原因になることも | 5,000円 ~ 2万円 |
| 突っ張り棒式の収納ラック | – 壁に穴を開けずにシャンプー等の収納場所を増やせる – 掃除がしやすくなる | – 耐荷重を必ず守って使用する – 定期的に掃除しないと接合部にカビが発生しやすい | 2,000円 ~ 1万円 |
| 防水スマートフォンスピーカー | – 音楽やラジオを聴きながらリラックスできる – お風呂で動画鑑賞も可能に | – 充電や置き場所に工夫が必要 | 3,000円 ~ 1万5,000円 |
| バスライト・キャンドル | – 照明を消して使えば、非日常的なリラックス空間を演出できる | – 火を使うキャンドルは火災や換気に十分注意する | 1,000円 ~ 5,000円 |

最後に、シャワーユニットの件に限らず、退去時の原状回復トラブルを未然に防ぐための重要なポイントを4つご紹介します。これは、賢く賃貸生活を送るための「お守り」のような知識です。
| 対策 | 具体的なアクション | なぜ重要か? |
|---|---|---|
| ①【最重要】現状の記録 | 入居日に、部屋全体の写真を日付入りで撮影する。 特に水回り、壁、床の傷や汚れは、様々な角度から細かく撮っておく。 | これが「入居前からあった傷」であることの動かぬ証拠となり、退去時の不当な請求からあなたを守ります。 |
| ② 早期報告・相談 | 設備の不具合(水漏れ、換気扇の異音など)に気づいたら、すぐに管理会社へ連絡する。 自己判断で放置したり、修理業者を呼んだりしない。 | 軽微な不具合の放置が原因で被害が拡大した場合、「善管注意義務違反」として修理費用を請求されるリスクを防ぎます。 |
| ③ 無断DIYの禁止 | DIYなど、室内の設備に対する軽微な変更を行う場合でも、必ず事前に管理会社へ許可を取る。 | 無許可での変更は契約違反です。許可を得ることで、原状回復の範囲などを事前に明確にでき、トラブルを避けられます。 |
| ④ コミュニケーション記録の保管 | 管理会社や大家さんとのやり取りは、可能な限りメールなど記録に残る形で行う。 もし電話で話した場合は、その内容をまとめたメールを送って確認する。許可証などの書類は退去時まで大切に保管する。 | 「言った・言わない」の水掛け論を防ぎ、万が一の際にあなたの主張を裏付ける客観的な証拠となります。 |

賃貸物件へのシャワーユニット設置は、建物の構造や契約上の制約から、残念ながら実現のハードルが非常に高いのが現実です。しかし、不可能だと諦める前に、まずはこの記事で得た知識を武器に、大家さんや管理会社へ誠実に相談してみることが大切です。
最も重要なのは、無断で行動を起こさず、必ず「報告・連絡・相談」を徹底することです。正しい知識と丁寧なコミュニケーションがあれば、賃貸物件でもあなたの理想のバスライフに一歩近づけるはずです。